2022年10月号　第062回「ベトナムで暮らして」

平成21年2月から一年半、ベトナムに部屋を借りて、月の半分はベトナムで暮らした。
月の半分ではあったが、「暮らした」と言ってよいと思う。

海外で働く事は夢であったが、実際には簡単ではなかった。前職での営業経験はゼロ、リーマンショック直後で日本からの投資額は激減。
厳しい状況だったが、現地在住の様々な日本人を辿って、様々な方に出会った。

受注ルートになりそうなベトナム人の組織にも飛び込んだ。
営業活動の一方で、会計や税務の実務もこなした。週末にはへとへとになった。

また、ベトナムは日本とは違うのである。
気候、歴史、政治、社会資本、言語、食事などが日本と違うという事は、実際に現地で暮らしてみて実感する。
帰国すると、日本の物品や役務の品質が殊の外高いという事を実感する。ビニール袋一つとっても日本の品質は圧倒的に高い。
日本の歴史や政治について興味を持ち始めたのはこの頃である。

それから、ベトナム人の関係者は私に対してとてもよくしてくれた。共に働いたベトナム人とは現在も繋がりがある。
これは、私が、先人がこれまで築き上げてきた日本の、日本人である事が、理由の一つなのではないかと考えている。

江幡　淳