江幡公認会計士税理士事務所

                                           

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税理士が提供する業務 - 千代田区 番町 麹町 半蔵門 税理士 会計士 江幡公認会計士税理士事務所

税理士が提供する業務

1.業務の概要                                             

 

税理士との契約をご検討中の方々に対し、税理士がどのような業務を提供し得るのかという点に関しまして、その概要を説明致します。

 

上表の業務のうち、一般的に提供されているのは、税理士業務と会計業務です。現在の法律では、税理士業務は税理士のみが提供することが許され、公認会計士といえども、税理士登録をしないと税理士業務を提供できません。一方、会計業務に資格要件は特にありませんが、会計の専門家に依頼するのが安心です。私の原点は公認会計士ですので、公認会計士としての知識と経験を基に、制度会計のみならず、顧客のご要望に基づき、管理会計などにも踏み込むことが可能です。

 

まず、税理士業務というと、一般的には「顧問料」という言葉で総称されますが、税理士業務には、具体的には、上表のように、税務代理、税務書類の作成、税務相談の3つが存在します。「顧問料」には、税務代理報酬と税務相談報酬が含まれるのが一般的です。

 

次に、会計業務は、決算書(財務諸表)作成、記帳代行、会計相談の3つが存在します。前述の「顧問料」には、会計相談報酬が含まれるのが一般的です。

 

最後に、補佐人としての業務とは、税務訴訟において納税者の正当な権利や利益の救済を援助するため、補佐人として、弁護士である訴訟代理人とともに裁判所に出頭し陳述を行うものです。また、書面添付の業務とは、一定の要件を満たした場合に税理士が一定の書面を添付することにより税務申告の信頼性が増し、税務調査や融資等で有利になる場合があります。お客様の状況に応じて、将来的には書面添付を検討してもよいかもしれません。

 

 

2.各業務の具体的内容                                         

 

① 税務代理

税理士は、税務に関して、顧客の代理人です。税理士は、顧客の租税に関する法令に規定された納税義務の確定及び履行に関する手続きを一貫して行います。つまり、顧客に代わって、税理士が税金計算や税務署への照会等の対応を行うのは、税務代理業務を遂行しているということなのです。顧問契約の場合は、税務代理報酬は顧問料に含まれるのが一般的です。顧問契約を締結して頂くことで、個別の報酬なしに適宜税務代理をお受け致します。また、受任の際も、顧問契約を締結していない場合の依頼よりも報酬額が低額になります。一方、顧問契約を締結しない場合、例えば、業務範囲を決算申告業務に限定した契約を締結した場合において、決算申告業務以外の業務が発生した場合は、その都度、執務時間に応じた別途報酬が発生することになります(タイムチャージ)。顧問料は一般的な執務時間を想定して毎月一定金額として設定されます。顧問料とは、タイムチャージと違って毎月一定額であり、顧客にとって金額が予測できるため、顧客に資する料金体系であると言えます。「顧問料は不透明だ。」「顧問料の金額の詳細な根拠を知りたい。」といった事を耳にする事がありますが、そのような方は報酬金額が青天井のタイムチャージをご選択頂くことになります(弊事務所では顧問契約以外は承っておりません)。

 

② 税務書類の作成

典型的なものは、税務申告書の作成です。その他、源泉所得税等の納付書、法定調書、法定調書合計表、各種届出書があります。どのような税務書類を作成するにも、情報収集、情報調査、追加情報収集、書類作成、顧客報告などのプロセスを経るため、基本的には、顧問料の他に別途ご請求させて頂くのが一般的です。

 

③ 税務相談

ある事象について、税務処理に関する相談対応をするのも税理士の業務です。顧問契約の場合は、税務相談報酬は顧問料に含まれるのが一般的です。顧問契約を締結して頂くことで、個別の報酬なしに適宜税務相談をお受け致します(相談内容によっては別途報酬が発生します。その場合は事前にお伝えします。)。また、受任の際も、顧問契約を締結していない場合の依頼よりも報酬額が低額になります。一方、顧問契約を締結しない場合、例えば、業務範囲を決算申告業務に限定した契約を締結した場合において、税務相談が発生した場合は、その都度、執務時間に応じた別途報酬が発生することになります(タイムチャージ)。顧問料は一般的な執務時間を想定して毎月一定金額として設定されます。顧問料とは、タイムチャージと違って毎月一定額であり、顧客にとって金額が予測できるため、顧客に資する料金体系であると言えます。「顧問料は不透明だ。」「顧問料の金額の詳細な根拠を知りたい。」といった事を耳にする事がありますが、そのような方は報酬金額が青天井のタイムチャージをご選択頂くことになります(弊事務所では顧問契約以外は承っておりません)。

 

④ 財務書類の作成

個人の場合の青色申告決算書は、税務書類に含まれるとされています。法人の場合は、貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、注記表、勘定科目内訳書等の作成が該当します。

 

⑤ 会計帳簿の記帳代行

日々の取引を会計帳簿に記帳する作業です。

 

⑥ その他財務に関する事務

ある事象について、会計処理に関する相談対応をするのも税理士の業務です。

顧問契約の場合は、会計相談報酬は顧問料に含まれるのが一般的です。顧問契約を締結して頂くことで、個別の報酬なしに適宜会計相談をお受け致します(相談内容によっては別途報酬が発生します。その場合は事前にお伝えします。)。また、受任の際も、顧問契約を締結していない場合の依頼よりも報酬額が低額になります。一方、顧問契約を締結しない場合、例えば、業務範囲を決算申告業務に限定した契約を締結した場合において、会計相談が発生した場合は、その都度、執務時間に応じた別途報酬が発生することになります(タイムチャージ)。顧問料は一般的な執務時間を想定して毎月一定金額として設定されます。顧問料とは、タイムチャージと違って毎月一定額であり、顧客にとって金額が予測できるため、顧客に資する料金体系であると言えます。「顧問料は不透明だ。」「顧問料の金額の詳細な根拠を知りたい。」といった事を耳にする事がありますが、そのような方は報酬金額が青天井のタイムチャージをご選択頂くことになります(弊事務所では顧問契約以外は承っておりません)。

 

⑦ 源泉徴収・年末調整

当該業務は税務代理をしていることになるのですが、源泉徴収簿、源泉徴収票、給与支払報告書、法定調書、法定調書合計表、源泉徴収税納付書等の作成に一定以上の作業時間が発生するため、顧問料の他に別途ご請求させて頂くのが一般的です。

 

 

3.税理士業務報酬算定に関するガイドライン(指針)                                         

 

税理士業務報酬に明確な基準はありませんが、税理士会会員の報酬算定基準作成の一助となるべく税理士会に示されたものとして、日本税理士会連合会業務対策部が策定した「税理士業務報酬算定に関するガイドライン(指針)」があります。税理士に委託する顧客にとっても税理士にとっても重要な内容が書かれており、公開情報であるので、一部をここに記載しておきたいと思います。

 

目 次
Ⅰ 税理士業務報酬規定の経緯と考え方
Ⅱ 税理士業務の特性と報酬の根拠
Ⅲ 税理士の業務範囲
Ⅳ 報酬算定の基本的考え方
Ⅴ 業務と報酬の契約形態と請求
Ⅵ 契約と説明責任
Ⅶ むすび
参考書式

 

Ⅰ 税理士業務報酬規定の経緯と考え方

 

1 過去の経緯
昭和 26 年 6 月、戦後の我が国の財政運営を支える一つの制度として、それまでの税務代理士法が廃止され税理士法が新しく成立した。この時の税理士業務報酬に関する規定は、国税庁長官が定める最高限度を超えてはならないという、行政が主体的に規制するものであった。昭和 41 年には報酬規定の全面的見直しが図られ、一部、税理士会に報酬についての自主的決定機能が認められたものの報酬の最高限度に関しては原則的に従前のままであった。
しかし、昭和 55 年の税理士法改正により、税理士会による税理士業務報酬の自主的決定権が確立し、それに基づき「税理士業務に対する報酬の最高限度額に関する規定」が新しく設けられた。いわば現行税理士業務報酬規定の誕生である。
この報酬規定の存在意義は、税理士業務の公共的役割に鑑み、第一に税理士の正常な業務活動を保障し、第二に納税者保護の観点から、納税義務者に対する税理士の不当な利益追求を排除することにあり、その意味で当該規定は税理士会の会員に対する指導・監督権限の一機能を担うものとして運用されてきたところである。

 

2 規制緩和の流れ
近年、 わが国の規制緩和推進が、 世界貿易機関 (WTO)、 経済協力開発機構 (OECD)等の発効する国際条約に基づいて大きく進展してきた。平成 10 年 3 月、政府は自己責任原則と市場原理に立つ経済社会を目指すとともに経済のグローバル化に対応する観点から規制緩和三か年計画を発表し、あらゆる分野での規制の見直しを図ることとした。その中で、資格者団体が定める報酬規定のあり方について、規制改革委員会(現在の総合規制改革会議)は、平成 12 年 12 月の見解において、資格者が受けられる報酬も市場における競争、需要と供給のバランス及び資格者の合理化努力の結果により決定されるべきものであるとし、さら
に基本的な考え方として、
(1)報酬規定が利用者の利便のために設けられているとしても、また、資格者団体が報酬基準を明示することが独占禁止法上直ちに問題とならない場合であっても、個々の資格者の原価計算の要素を考慮せずに、一律に基準額を示すことは適切ではなく、資格者団体が基準額を示すことに代えて各資格者が独自の報酬額を算定できるよう、報酬についての基本的な考え方や原価計算の方法を示すことにとどめるべきである。
(2)各資格者が独自に適切な報酬額を算定し事務所に掲示し、委嘱者に詳細に説明すれば、利用者の報酬についての不安を解消することは可能であり、 さらに、各資格者の報酬額を広告記載事項として認めることにより、利用者にとって資格者についての情報が不足しているという情報の非対象性を解消でき、利用者は資格者に業務を委嘱する前に、あらかじめおおよその報酬額を知り、同業他者と比較することが可能となり、また、合理化により低廉な報酬で優れたサービスを提供できる資格者は、その業務を拡大することも可能となるのではないか。
(3)報酬基準は、最高価格を抑制する上限規制的に機能する場合がある一方で、基準額より下がらないという最低価格を定める機能をも有しており、報酬基準が報酬の値崩れに対する防波堤になっているとの指摘もあり、さらに、報酬基準自体は目安であるとしても、当事者による報酬額の交渉はそこを出発点とするため、結果として資格者間でほぼ横並びの報酬になり、廉価なサービスを提供するための真の努力が行われているとはいえない、との理由等から、資格者団体の報酬規定を会則記載事項としないことを提言した。
これを受け、政府は資格制度に関し、特に資格者が受ける報酬については資格者間の競争活性化の観点から、資格者団体の会則において報酬規定を設けることを廃止する基本方針を定めた。

 

3 税理士法改正
このような規制緩和の要請を受け、本会は、平成 12 年 9 月 21 日の理事会において、今次の税理士法改正要望項目に、報酬に関する規定を会則の絶対的記載事項から削除することを決定した。このような要望を受けた改正税理士法は、 平成 13 年 5 月 25 日成立し、平成 14 年 4 月 1 日の施行が確定した。
これにより平成 14 年 3 月 31 日をもって、 現行税理士業務報酬規定は廃止となり、同年 4 月 1 日以降、会員は自由な意思の下、自己責任と説明責任に基づいて報酬額を算定し委嘱者に請求することとなる。

 

4 公正取引委員会の要請
一方、今後の資格者団体の報酬等に関する活動のあり方については、公正取引委員会が独占禁止法上での取扱いを明確にすることとし、 平成13年10月24日、「資格者団体の活動に関する独占禁止法上の考え方」を公表。この中で報酬に関する活動について、独禁法上問題となる場合とは、資格者団体が、
(1)会則に報酬に関する基準を記載することが法定されている場合において、
①定めた報酬額について値引きを禁止し、又は、値引きを報酬額の一定割合の範囲内と定めて報酬を収受させること
②報酬基準の設定が法定されている資格者の業務以外の業務に係る報酬についてまで基準を設定すること
(2)会則に資格者の収受する報酬に関する基準を記載することが法定されていない場合において、標準額、目標額等、会員の収受する報酬について共通の目安となるような基準を設定すること
であるとし、
独禁法上問題とならない場合とは、
(1)需要者、会員等に対して過去の報酬に関する情報を提供するため、会員から報酬に係る過去の事実に関する概括的な情報を任意に収集して、客観的に統計処理し、報酬の高低の分布や動向を正しく示し、かつ、個々の会員の報酬を明示することなく、概括的に、需要者を含めて提供すること(会員間に報酬についての共通の目安を与えるようなことのないものに限る。また、 価格制限行為の監視のための情報活動に該当するものを除く。)
(2)原価計算や積算について標準的な費用項目等を掲げた一般的な方法を作成し、これに基づいて原価計算や積算の方法に関する一般的な指導等を行うこと(会員間に報酬や積算金額についての共通の目安を与えるようなことのないものに限る。)であることを明らかにした。
これらの意味することは、資格者団体の会員に対する指導・監督機能が従来に比して大きく変化したことを表すとともに、今後の税理士会が行う報酬に関する会員指導は、これらの考え方を充分踏まえた施策であることが求められているといえよう。

 

5 今後の税理士業務報酬の考え方
今回の改正において、税理士法第 1 条(税理士の使命)の達成を支える税理士業務の無償独占的機能については、従前どおり堅持された。このことは税理士業務の公共性が支持されたものであり、これに伴う報酬については、改正決議に当たっての衆参両議院における「税理士業務に係る報酬の最高限度額に関する規定が撤廃されることに伴い、規制改革委員会の指摘を踏まえつつ、不適切な報酬設定が行われることのないよう特段の努力を払うこと」との附帯決議において、納税者への配慮が強く期待されていることを念頭に置く必要がある。
以上のことから、本会は税理士法第 1 条(税理士の使命)の実現を基本的姿勢としつつ、上記の独禁法上問題とならない考え方に沿って、不適切な報酬設定が行われないように、「税理士業務報酬算定に関するガイドライン(指針)」を策定し、税理士会会員の報酬算定基準作成の一助となるべく税理士会に示すものである。

 

Ⅱ 税理士業務の特性と報酬の根拠

 

1 税理士業務の公共性
税理士は、税務に関する専門家として、独立した公正な立場において、申告納税制度の理念にそって納税義務者の信頼にこたえ、租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図ることを使命とすることとされている(税理士法第 1 条)。
ところで、現在の我が国では、ほとんどの租税について申告納税制度が導入されている。この申告納税制度は、納税義務者が申告により第一次的に自己の租税債務を確定させることを本旨とするものである。したがって、納税義務者は自己の納税義務の範囲を積極的に明確にする必要があり、そのために信頼できる専門家の援助が求められることとなる。
税理士制度は、 税務に関する専門家としての税理士がかかる納税義務者を援助することを通じて、その納税義務の適正な実現を達成し、よって申告納税制度の円滑・適正な運営に資することを期待されて設けられているものである。税理士業務は、このような税理士の公共的使命を果たすための公共的役割を担うものであり、社会的有用性と必要性の高い業務と位置付けられるものである。

 

2 税理士業務の無償独占性
上記に述べたとおり、税理士業務が公共的役割を担っていることは明らかであり、また、その業務の内容は高度な専門的知識や客観的で冷静な判断が必要とされ、健全な常識と高潔な人格が求められるものである。
したがって、税理士業務を行う者には厳しい資格条件が課されており、原則的に一定の試験を合格した者等に対し、限定的に付与されるものである。
また、資格を有さない者が他人の求めに応じて税理士業務を業として行った場合には、納税者の財産権が不当に侵害されることが予想されると同時に、適正な納税義務の実現が履行されない恐れが極めて大きくなる。
そのため、税理士法第 52 条において、税理士及び税理士法人以外の者が税理士業務を行うことは、税理士法が特に認める場合を除いては禁止され、税理士資格に対し独占的排他性が付与されている。
さらに、税理士法第 2 条に規定されている「業とする」とは、判例において「反復継続の意思をもって他人の求めに応じて同条各号所定の事務を行えば足り、その他にその他人が不特定であることないしは多数であること、その事務を営利の目的をもって行ったことなどを必要としないものと解される」(昭和 40年 2 月 26 日 東京高裁昭和 39 年(う)第 1991 号)と判示されており、税理士業務にかかわる事務を反復継続して行い又は反復継続して行う意思をもって行うことを指し、営利目的の有無ないし有償無償の別は問わず無資格者による税
理士業務は禁止されるとの判断が明確に示されている。
いわゆる税理士業務の無償独占性の解釈である。
なお、資格者業務等に関する規制緩和推進の流れの中における今次の改正においても、税理士業務の公共的役割の重要性に対する国民の認識は変らず、その社会的有用性が今後も維持される必要性から、税理士業務の無償独占性が堅持されたものと解されるところである。

 

3 税理士業務報酬の根拠
税理士は、他人の求めに応じ、租税に関し、税務代理、税務書類の作成、税務相談の事務を行うことを業とする(税理士法第 2 条)。
この規定には他士業の規定に見られるような 「報酬を得て」 との文言がなく、業務報酬請求の根拠が示されていない。現行税理士法第 49 条の 2 第 2 項第 7 号によって、報酬の最高限度額に関する規定を税理士会の会則に定めることとしており、現状、この規定を根拠として報酬を請求している。
今後、税理士業務報酬規定の廃止に伴い、税理士会会員にとっては、その業務報酬請求の根拠が明確にされる必要があると考えられる。
まず、商法の見地からこれを検討した場合、税理士業務は、商法第 501 条及び第 502 条に規定する商行為に該当するものではなく、更には、「業とする」の解釈についても、医師、弁護士、税理士等のいわゆる自由職業者が業として反復継続してなす行為は、たとえ本人が主観的に営利の目的をもって行うとしても、現在の一般社会通念においては、その営利は従たる目的にすぎず、営業行為とは認められないものと解されている。したがって、これらの者は法律上、商人とはならないものであり、税理士が行う税理士業務に関する報酬については、 商法第 512 条に規定される商人の商行為に基づく報酬請求権は発生しないと理解されるところである。
次に、民法の見地から検討した場合、税理士法第 2 条の「他人の求めに応じて~(中略)~事務を行う」とは、その業務の性質上、民法第 643 条に規定する法律行為の委任及び民法第 656 条に規定する事実行為の委託(準委任)に基づく事務を行うものと解される。
この場合、民法の委任に関する規定は準委任の規定に準用されるところから、委任等に係わる事務に対する報酬については、民法第 648 条第 1 項の「受任者ハ特約アルニ非サレハ委任者ニ対シテ報酬ヲ請求スルコトヲ得ス」との原則無償の規定が働くこととなる。
では、特約がなかった場合には、報酬の請求権は成立しないのであろうか。 民法第 92 条は「法令中ノ公ノ秩序ニ関セサル規定ニ異ナリタル慣習アル場合ニ於テ法律行為ノ当事者カ之ニ依ル意思ヲ有セルモノト認ムヘキトキハ其慣習ニ従フ」と規定し、契約での当事者が定めていない事柄の解釈について示している。これによれば、契約(法律行為)の解釈においては、当事者が反対の意思を表示してない限り、まず慣習が適用されるとの説が一般的である。したがって、税理士、弁護士等、委任事務を処理して報酬を受けることが慣行になっている職業の場合には、委任等の契約がなされた際、特に報酬を支払う旨の明示がなくても、慣行に基づく合意があったものと解され、当然、業務に対する相当な報酬の支払を受けることができるものとされている。
この考え方については、弁護士や税理士の業務報酬に関する現在までの判例でも多数採用されており、業務の委任の際に報酬に関する事項の明示がなくても、当然に当事者間においては報酬に関する「黙示の合意」があるものとする判断が判示されていることからも、一般的な解釈と考えられるものである。
これらのことから、税理士の業務報酬については、事実たる慣習に基づく合意(黙示)を根拠とする報酬請求権の成立が通説と解されるところである。
なお、委任及び準委任以外の業務については、民法第 632 条の請負の規定等が適用されると考えられ、 これらの場合には有償契約が前提となるので、 特に、報酬の根拠については触れないこととする。

 

Ⅲ 税理士の業務範囲

 

税理士は、他人の求めに応じ、租税に関し、次に掲げる事務を行うことを業とすることができる。
税理士法は、 税理士業務の対象となる租税については原則として国税及び地方税のすべてであるという基本的考え方に立ちつつも、税理士業務が独占業務である点からみて、その範囲は最小限のものにとどめるべきであるとして、税理士の援助を特に要しないと認められる税目については業務の対象から除外している。
《除外税目》
印紙税、登録免許税、自動車重量税、電源開発促進税、関税、とん税、特別とん税、狩猟者登録税及び入猟税並びに法定外普通税

 

1 税務代理(法第 2 条第1項第1号)
税務官公署に対する租税に関する法令若しくは行政不服審査法の規定に基づく申告、申請、請求若しくは不服申立てにつき、又は当該申告等若しくは税務官公署の調査若しくは処分に関し税務官公署に対してする主張若しくは陳述につき、代理し、又は代行することをいう。
「代理」とは、代理人が本人に代わって意思表示をなし、又は意思表示を受領し、その法律効果が直接本人に帰属する関係をいい、本来、法律行為の場合について用いられる概念であると解される。他方、「代行」は、代理のみならず、 本人に代わって事実行為を行うことも含むものと解される。ところで、税理士法上の「税務代理」には、納税者に代わって、申告等の法律行為をする代理だけではなく、納税者の納税義務に関して、税務当局との間で行う事実認定、法解釈等についての税務折衝など事実行為の代行も含まれることになる。
「主張」と「陳述」については、一般的に、前者が自分の意見を積極的に表明することを意味するのに対し、後者は、単に「主張」のみならず事実の説明を行うことも含むものと解されるが、税理士が、税務官公署に対して、納税者に代わり折衝する場合は、当然のことながら、専門家としての立場から、意見を述べあるいは事実関係の説明をすることが通常であり、このような状況を想定して、主張・陳述という用語が用いられている。
なお、税務官公署とは、国税については、国税庁、国税局、税務署がこれに該当し、地方税については、地方公共団体(都道府県及び市町村)の税務関係部局(税務課、税務事務所等)がこれに該当する。
さらに、「申告等」とは、次の行為をいう。
①申告:所得税、法人税等の納税申告、住民税、事業税等の課税標準についての申告等である。
②申請:納税の猶予申請、所得税の予定納税額の減額承認申請、相続税の物納・延納申請、適格退職年金契約の承認申請、酒類の未納税移出承認申請等である。
③請求:更正の請求、差押換の請求等である。
④不服申立て:不服申立てには、処分官公署又は不作為官公署に対してする「異議申立て」と処分官公署又は不作為官公署以外の行政官公署に対してする「審査請求」とがある。
⑤届出:納税地の移動に関する届出等である。
⑥報告:酒類の購入及び販売数量等の報告、不動産取得税等の地方税の賦課徴収に関する報告等である。
⑦申出:国税の予納の申出、固定資産課税台帳の登録事項に関する審査の申出等である。
⑧申立て:租税条約の規定に適合しない課税に関する申立て等である。
⑨その他これらに準ずる行為:不服申立てに関連して行われる補正や反論、後述する税務書類となる明細書や計算書の提出等、特定の事実あるいは意思を伝達する行為であると解される。

 

2 税務書類の作成(法第 2 条第 1 項第 2 号)
税務官公署に対する申告等に係る申告書等を作成することをいう。
「申告書等」とは、申告書、申請書、請求書、不服申立書その他租税に関す
る法令の規定に基づき、作成し、かつ、税務官公署に提出する書類で財務省令で定めるものである。財務省令では、届出書、報告書、申出書、申立書、計算書、明細書その他これらに準ずる書類が税務書類に該当する。なお、これらに準ずる書類とは、特定の事実あるいは意思を伝えることを内容とする文書と解されている。また、「作成する」とは、自己の判断に基づいて書類を作ることであり、依頼者の口述どおりに記述するような単なる代書は含まれない。
なお、財務諸表は、もともと税法の規定に基づき作成されるものではないから、たとえ税法上、申告書等の添付書類としてその提出が義務付けられていたとしても、税務書類の範囲に含めることは適当ではない。
ただし、所得税法の規定により青色申告書に添付すべき貸借対照表及び損益計算書は、主として税務計算を目的として作成されるものであり、所得税法施行規則の規定に基づき財務省告示として、その細目が定められているところから、税務書類に含まれるものと解されている。

 

3 税務相談(法第 2 条第 1 項第 3 号)
税務官公署に対する申告等、税理士法第 2 条第 1 項第 1 号に規定する主張若しくは陳述又は申告書等の作成に関し、租税の課税標準等の計算に関する事項について相談に応ずることをいう。
「租税の課税標準等」とは、国税通則法第2条6号イからヘまでに掲げる事項(課税標準、課税標準から控除する金額、純損失等の金額、納付すべき税額、還付金の額に相当する税額、納付すべき税額の計算上控除する金額又は還付金の額の計算の基礎となる税額)及び地方税に係るこれらに相当するものをいう。
「相談に応ずる」とは、具体的な納税義務に係わることについて、相談を受けて意見を述べたり教示したりすることをいう。

 

4 補佐人としての業務(法第 2 条の2)
税理士が租税に関する事項について、裁判所において補佐人として、弁護士である訴訟代理人とともに出頭し、陳述することをいう。
この業務は、今次の改正によって創設されたものであり、民事訴訟法第60条に規定する補佐人とはその性格を異にしている。特に、裁判所の許可を必要とせずに本業務を行えることに大きな特徴があり、税理士本来の業務と位置付けられるものである。
「租税に関する事項」とは、税務官公署に対する申告等又は税務官公署の調査若しくは処分に関する事項のほか、国税債権不存在確認訴訟、国家賠償請求訴訟、税理士が税法の適用誤りを行った場合の損害賠償請求訴訟、相続争いに伴って生じた訴訟における租税に関する事項等であり、国又は地方公共団体が訴訟当事者となる場合以外の訴訟に関する事項も含まれる。ただし、刑事事件を除く。
「陳述」とは、裁判所に対し、その事件についての事実上及び法律上のあらゆる点について口頭又は書面で述べることをいう。
なお、陳述と尋問は明らかに異なる訴訟行為として、陳述には尋問は含まれていないとの見解と、陳述は訴訟法上の立証にあたり証拠挙証の一環として尋問が可能との見解があり、今後の判例等によって確定していくものと思われる。

 

5 書面添付に係わる業務(法第33条の2)
①計算事項等を記載した書面添付に係わる業務
税理士又は税理士法人が、申告納税方式又は申告納付若しくは申告納入の方法による租税の課税標準等を記載した申告書を作成したときに、当該申告書の作成に関し、計算し、整理し、又は相談に応じた事項を財務省令で定めるところにより記載した書面を当該申告書に添付する業務をいう。
②審査事項等を記載した書面添付に係わる業務
税理士又は税理士法人が、申告納税方式又は申告納付若しくは申告納入の方法による租税の課税標準等を記載した申告書で他人の作成したものにつき、相談を受けてこれを審査した場合において、当該申告書が当該租税に関する法令に従って作成されていると認めたときに、その審査した事項及び当該申告書が当該法令に従って作成されている旨を財務省令で定めるところにより記載した書面を当該申告書に添付する業務をいう。
なお、今次の改正により上記の書面の添付のある申告書を提出したものについて、当該申告書に係わる租税に関しあらかじめその者に日時場所を通知してその帳簿書類を調査する場合において、当該租税に関し法第30条の税務代理権限証書を提出している税理士があるときは、当該税理士に対し、当該添付書面に記載された事項に関し、意見を述べる機会を与えなければならないとの規定が新設され、これに該当する場合には意見陳述の業務が必要となる。また、 更正に係わる意見聴取(法第35条第2項)の業務については、従前のとおりである。

 

6 財務書類の作成、会計帳簿の記帳の代行その他財務に関する事務の業務
税理士又は税理士法人は、 上記に述べた業務以外に、 税理士の名称を用いて、他人の求めに応じ、税理士業務に付随して、財務書類の作成、会計帳簿の記帳の代行その他財務に関する事務を業として行うことができる。
また、税理士業務に付随しないで、財務書類の作成等の事務を業として行うことができる。ただし、いずれの場合でも、他の法律においてその事務を業として行うことが制限されている業務を除く。
「財務書類の作成、会計帳簿の記帳の代行」とは、いわゆる会計業務を指し、財務諸表及び試算表等の書類作成や会計帳簿の記帳の代行及び会計帳簿の作成等を言う。「その他財務に関する事務」とは、伝票の起票、資金繰り表の作成、 会計処理等に関する相談など、依頼者の財政に係わる事務をいう。

 

7 他の法律により税理士が行うことのできる業務
①社会保険労務士の業務
社会保険労務士法第27条ただし書き及び同法施行令第2条第2号により、 税理士又は税理士法人は、税理士法第2条第1項に規定する業務(税理士業務)に付随して社会保険労務士法第2条第1項第1号から第2号までに掲げる事務を業として行うことができることとなっている。
②地方公共団体の外部監査人の業務
地方自治法第252条の28第2項の規定では、普通地方公共団体は、外部監査契約を円滑に締結し又はその適正な履行を確保するため必要と認めるときは、地方自治法第252条の28第1項の規定にかかわらず、普通地方公共団体の財務管理、事業の経営管理その他行政運営に関し優れた識見を有する者であって税理士(税理士となる資格を有するものを含む)であるものと外部監査契約を締結することができるとしている。

 

Ⅳ 報酬算定の基本的考え方

 

1 報酬の適正な算定
公共的使命を持つ税理士は、税理士事務所を健全に経営する責務がある。したがって、 その業務報酬は、 委嘱納税者に受け入れられるものであるとともに、社会に継続した専門家サービスが提供できる基盤を支えるものでなくてはならない。
報酬の算定にあたっては、算定の基準と算定方法を説明できる合理的なものでなくてはならない。市場原理に根ざす適正な報酬額は、税理士の業務の原価に基盤においた額とサービスを受ける納税者の利益との交叉点で定まるはずであるが、 ここでは、 税理士報酬算定の考え方と考慮すべき要素について述べる。
なお、本稿では、税理士個人の報酬算定の考え方を基本とし、税理士法人は個人税理士の集合体として捉え、その報酬算定については、税理士個人と同様の観点に立脚している。

 

2 税理士報酬の構成
報酬の請求形態には時間計算や固定額顧問契約など様々な契約が考えられるが、その報酬が適正であるというためには、まず基準となる報酬額がなくてはならない。
税理士の業務報酬は、適正な専門家サービスの対価と事務所運営の費用から構成されるものと考えられる。 「専門家サービスの対価」とは、税理士にとっては所得の額に相当するものであり、 「事務所運営の費用」とは、いわば税理士業の経費であろう。
具体的には、専門家サービスの適正な年間対価の額と予想される年間事務所運営費用を年間業務時間で除した金額が、時間あたりの基準額となる。
この基準額は事務所ごとに単一ではなく、税務相談業務と税理士の下で事務所職員が行う伝票入力事務などは、基準額が異なることになろう。
この場合の年間業務時間の中には、研修・調査研究に要する時間が含まれていることも考慮しておくべきである。

 

3 適正な専門家サービスの対価
適正な専門家サービスの対価の額は、税理士としての自己の専門的能力、経験実績などを勘案し、税理士が各自算定すべきものである。通常、業務経験は能力を向上させる要素であり、多様な経験は類似事案の事務に力となるはずである。基本的な対価の額は専門家一人ひとりによって異なるであろうが、同時に対象業務によって異なる対価とすることも不合理ではない。例えば国際税務などに専門的能力を有する税理士は、その能力を発揮できる業務に対しては、 相当の対価を設定することも考えられる。

 

4 事務所運営の費用
事務所運営の費用としては、以下のようなものが考えられる。
①事務所職員に関する費用:給与賞与、 法定福利費、 福利厚生費、 通勤交通費、退職準備金、研修教育費など。
②事務所設備維持に関する費用:家賃、水道光熱費、コンピュータ等事務機器に要する費用、 保険料、 減価償却費など。
③その他経費:交通費、通信費、消耗品費、広告費、外注費など。

 

Ⅴ 業務と報酬の契約形態と請求

報酬の適正な基準額を基にして、業務に関し報酬を請求する場合にも、その契約・請求形態には様々なものが考えられる。 税理士の業務には継続的なもの、臨時的なもの、複数の業務が関連しているもの、単独のものなど形態が様々である。したがって、単一の契約・請求形態をとることは困難であろう。
そこで以下考えられる契約・請求形態を「基本的報酬形態」と「付加的報酬形態」に分け、業務内容の例示とともに述べることとしたい。

 

1 基本的報酬形態
(1)固定額方式
「固定額方式」とは、あらかじめ想定した業務量を基に報酬金額を固定しておく契約形態である。従来より固定額方式の税理士顧問契約が一般的であったと思われる。複合した業務が定常的に起こる事業者、法人などに対しては、委嘱する納税者にとっても簡素で望ましい形態であろう。
①包括固定額報酬方式
法人、個人事業者など継続的に税務業務が生じる顧客を対象としたいわゆる税理士顧問契約には、従来より税務代理報酬と税務相談報酬を包括する固定額報酬契約が一般的であった。もっとも包括する範囲は合意により自由に決めることができる。
年総額を決める形式と月次報酬額を定め、決算申告時の報酬を別途定める形式もある。
法人税、消費税、法人事業税など基幹的税務のほか、源泉所得税までを含み固定額を契約することが多いであろう。会計業務も合わせて契約することも少なくないものと思われる。
この契約形態においては、受託業務の範囲を明確にしておくことが重要である。調査立会報酬、年末調整業務、社会保険労務士業務など付随的業務については、この固定額報酬契約に含まれるのか、別途請求すべき業務となるのかを明確にしておくことが望ましい。
②業務別固定額報酬方式
先に述べた包括的固定額報酬方式と対比される形態として、個別の業務を明確にしながら、固定額報酬として契約する方式がある。
相続税申告業務を一括して固定額報酬で受任するような契約形態である。異議申立、審査請求業務などでもこのような業務別固定報酬契約が採られることもあろう。
(2) 従量額方式
「従量額方式」とは、作業量に応じて報酬金額が変動することを約してする
方式である。作業量の指標としては、税理士サイドの投下業務時間数、日数、 また業務の対象である伝票枚数、調査対象である不動産物件数などを基準にす
る形態と成果物である書類点数等を基準とする場合、また、委嘱者サイドの所
得額、取引金額、税額など業務対象の多寡を基準におくことも考えられよう。
①業務時間基準方式
業務時間の時間あたり報酬単価を定めておき、その業務に携わった時間数を乗じて請求報酬額を算定する方式である。時間単位のほか、日数(又は半日単位)によること(日当方式)も考えられよう。
専門家である税理士の業務時間数を基準とすることも、事務所職員を含めた事務所全体としての稼働時間数を基準と採ることもできよう。また、事務所職員の習熟度に応じて業務従事職員ごとに基準額に差を設けることも考えられる。
税務相談に対する報酬は、その内容が事前に推し量れないので、基本的に時間単位によることになろう。調査立会報酬を日数に応じて算定することも合理的である。添付書面作成及び意見の聴取(税理士法第 33 条の 2)に係る報酬、また異議申立書、審査請求書等の作成、訴訟補佐人などの権利救済業務に対する報酬も時間を基礎に算定することができる。また、相続税、贈与税及び譲渡所得税の申告に対する報酬、物納申請に対する報酬について、業務時間を基準とする方式を採ることもできる。
②業務件数基準方式
会計業務報酬を処理すべき伝票枚数あるいは仕訳件数を基準として請求報酬額を算定することも考えられる。給与計算業務、年末調整業務を対象人数に応じて算出することも合理的であろう。物納申請を対象物件数で算定することも考えられる。
この場合には、業務量を示す合理的な対象を選定することに留意したい。
③外形指標方式
税理士の業務の多くは、経験上、業務対象の外形的な大きさによって業務量が左右されると考えられる。
委嘱納税者の事業に関する業務については、その年間取引高、資本金額、利益金額、従業員人数等の事業規模を示すものを外形指標としたり、相続税事案に関し相続財産総額、法定相続人人数等を外形的指標として、報酬金額とする方式が考えられる。
また、訴訟における補佐人業務は関与弁護士の報酬を基礎として税理士の報酬を算定することも考えられよう。
(3)固定額・従量額ミックス方式
報酬算定方式としては、固定額方式と従量額方式が基本であるが、現実の業務実態を考えれば、固定的な一定額を「基本報酬」と定め、業務量に応じた従量額を加算して報酬とする方式が適する場合が多いであろう。
税務申告代理に当たって、一件当たりの「基本報酬」を定め、その上で委嘱納税者の事業規模、相続税においては相続財産総額に応じた額を加算して報酬金額を定めることが考えられる。
こうした場合、その「基本報酬」には一定の範囲内の業務が含まれると考えられるから、その範囲はあらかじめ明確にしておくべきであろう。納税額のいかんに関わらず申告代理・税務書類の作成業務に着手したら、当然なされる基礎的聴取・事実の収集等がこの「基本報酬」に対応するものであろう。

 

2 付加的報酬形態
(1) 難易度加算
事案によっては、特に調査研究を必要としたり、外部専門家の協力を要する場合も考えられる。また、期限間近で合理的な処理日数を確保し難い場合もある。こうした様々な要因を考慮して、委嘱納税者の了解を得て本来の基本的報酬形態で算定する報酬額に加算することは可能であろう。
(2)出張報酬、旅費交通費
本来、税理士の業務はその事務所で行われることが基本であり、特に業務のため出張した場合の出張手当を定め報酬として出張報酬を請求することもできる。その際、必要な旅費交通費・宿泊費も請求できよう。
(3)外注費用及び実費
鑑定、資料の翻訳、調査等を外部の者に委嘱せざるを得ない場合もある。このように外部に依頼することで発生する費用は、委嘱者の了解のもと、本来の報酬に加算して請求できるものと考えられる。
また、本来の報酬ではないが、受任業務のために特に要した実費費用を実費精算として報酬に加え請求できることは、当然である。ただし、特に要した費用の請求については、事前に定めておくことが望ましい。

 

Ⅵ 契約と説明責任

わが国の規制改革の推進は、同時に司法制度改革の実現へと向かっている。 これらの背景には、国民の権利意識の確立が熟成される状況があり、契約社会や訴訟社会の形成がなお一層進展の方向にあると思われる。
司法制度改革による法曹人口の増加によって事件処理が迅速になる反面、今まで事件とされなかったものが多数、事件として扱われることが予想される。 特に、民事事件については弁護士の増加に伴い契約に関わる事案などが多くなるものと考えられるところである。
従来から、税理士は主に口頭による契約によって業務を行っている実態がある。そのため業務の受任範囲が曖昧となり委嘱者との紛争の大きな原因となっていることは否めない事実である。さらに、今次の法改正によって税理士報酬規定が廃止されることは、報酬の拠りどころがなくなることであり、自ら報酬についての計算や説明もない曖昧なままの受任は紛争の原因を増やす結果となる。 これらのことから、今後、税理士は、これからの社会の方向や国民の権利意識の高まりを念頭において業務及び報酬の契約を締結し、受任業務範囲の明確化と
業務内容及び報酬等に関する説明責任を果たす必要がある。
契約と説明は、相互信頼と安心の確保につながる証となる。

なお、現在までの税理士損害賠償事件の判例のうち、特に参考となる事例の判示事項を掲載したので参考にされたい。
(1)東京地裁昭和 57 年(ワ)第 11232 号、東京地裁昭和 62 年 2 月 24 日判決 東京高裁昭和 62 年(ネ)第 597 号報酬金請求控訴、同附帯控訴事件 東京高裁昭和 63 年 5 月 31 日判決(原判決一部変更)(上告)【判例時報 1279 号19 頁】
《判示事項》
5 年間の期間を定めて税務会計事務の処理を委任した側から、その期間中に委任契約を解除することができるかが争われた事件で、税理士に対する期間の定めのある委任契約を民法第 651 条第1項に基づく解除をできるとし、昭和 55 年度分の記帳代行報酬及び決算報酬と昭和 56 年 5 月までの記帳代行報酬 5 年間の期間を定めて税務会計事務の処理を委任した金 70 万円余を支払えとした。
(2)東京地裁平成 3 年(ワ)第 2757 号報酬金請求事件 東京地裁平成 4 年 4月 23 日判決(一部認容)(控訴)【判例タイムズ 803 号 223 頁】(税理士報酬規定の研究 TKC出版 平成 7 年 1 月 20 日 9 頁)
《判示事項》
報酬額について明確な約束がなかった場合の税理士報酬額の算定基準について、原告(税理士)と被告(委嘱者)間の委任につき報酬を支払う合意の契約があるなしに係らず、前払金の授受により合意があったとすることが明らかである。また、報酬額について明確な約束がない場合、特段の事情がない限り、税理士会の会則で定めた報酬の最高額に関する規定を上限として、事案の難易、処理に要した時間労力等を考慮し相当と認められる額の報酬を支払うとの合意が黙示になされたものと認めるべきであるとした(税務代理報酬を報酬規定の最高限度額の 65%、税務調査立会い料報酬は 1 日 5 万円、相続税申告における遺産総額の加算は、 報酬規定の加算限度額の 80%相当と判示した)。
(3)名古屋地裁平成 10 年(ワ)第 224 号報酬金請求事件 名古屋地裁平成 12年 3 月 24 日判決(一部認容)(TAINSコードZ999-0031)
《判示事項》
原告(税理士)と被告(委嘱法人)の土地の特別土地保有税及び固定資産税の申告等の税務代理委任につき報酬額が争われた。原告(税理士)は、4,800 万円を請求した。ちなみに業務報酬の最高限度額は、7,219 万円と考えられる。裁判所の判断では、原告の報酬は 3,900 万
円をもって相当な報酬額とするとした。この裁判においても原告の報酬額につき検討するに、報酬額について明確な合意がなかった場合については、特段の事情がない限り、税理士会の会則で定めた報酬の最高額に関する規定(税理士法第 49 条の 2 第 2 項 7 号)を上限として、事案の難易、処理に要した時間労力等を考慮し相当と認められる額の報酬を支払うとの合意が黙示になされたものと認めるのが相当であるとした。

 

Ⅶ むすび
昭和 55 年 4 月、税理士会の自主的決定権によって制定された現行「税理士業務に対する報酬の最高限度額に関する規定」は、平成 14 年 3 月 31 日をもって廃止される。
制定以来、20 年以上にわたって機能してきたこの規定も、時代の大きな流れの中でその役割を終えることとなった。
独占的業務を行う士業の中で、 その業務報酬について納税者保護の視点から最高限度額を規定しているのは税理士会が唯一であり、その果たしてきた役割は、納税者ひいては国民にとって大きな安心と信頼につながったものと言えよう。
平成 14 年 4 月 1 日以降、税理士及び税理士法人は自由で公正な競争の下で業務を行い、自らの基準による報酬を請求することとなる。
しかし、今次の改正によって税理士報酬「規定」は廃止されたものの、税理士報酬が持つ社会性が失われたものでは決してない。特に衆参両議院での改正についての附帯決議には、税理士報酬の適正な算定に対し強い期待が込められている事を深く認識すべきであろう。
この「税理士業務報酬算定に関するガイドライン(指針)」は、一切の数値を提示しておらず、以前から馴れ親しんできた報酬規定とは大きく相違している。税理士業務の法令上の解釈や様々な考えられる業務の形態、あるいは報酬算定要素の例示等を主な内容としている。
ここに示した項目や要素等が必ずしも絶対的なものではなく、 税理士会会員の個別的事情も当然にその算定根拠に算入すべきものであることに異論はない。
このガイドラインが一つの参考として、 税理士及び税理士法人事務所における報酬算定基準の作成の一助となることを願うものである。

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