2019年11月号　第027回「あれもこれもそれも」

あるお寺の掲示板にこう書かれていました。「思い通りになることなどない。何一つない。」と。
そう言われてみるとそうだなと納得しました。また、心が少し楽になったようにも感じました。

お寺の言葉を真摯に受け止めるならば、あれも、これも、それも叶わないからといって、腹を立てたり、悲観的になったりしてはいけません。ビジネスをしていると、時には、自分が八方塞がりの状況にいると感じることがあるでしょう。心身が疲れている時は特に陥りやすいと思われます。
そのような時は、思考がネガティブになっており、感謝の心に乏しく、物事の些末な欠点ばかりが目に付きがちです。そうなると、物事を大局的に捉え、合理的な意思決定ができないと思われますので、重要な意思決定をしてはなりません。

思い切って仕事の手を止め、寝てしまうことです。12時間くらい寝て、頭がすっきりしたら、「今有るもの」を一つ一つ思い浮かべてみてください。今有る取引先、健康、家族、従業員などです。

あれもこれもそれも、今すぐに、一度に手に入れば、ビジネスがより良くなるかもしれませんが、そうは問屋が卸さないのだと思います。やはり、自分が先に何かを差し出すことをしないで、自分が先に何かを得ようとするのは、都合が良すぎるのかもしれません。また、頭で考えるだけで、それ相応の行動を伴っていないのに、あれもこれもそれもと求めたところで、本当に必要なものは手に入らないと思われます。

ビジネスとは、自分の社会的役割と信ずるところの経済活動を通して、人と人をつないでいくことだとも言えると思います。相手が有ってのことですので、自分の「思い通りになることなどない。何一つない。」のだと思います。

江幡　淳